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小説「ベートーヴェン捏造」のネタバレ完全解説|登場人物とストーリーを徹底紹介

2018年に出版され、大きな話題を呼んだかげはら史帆による歴史ノンフィクション小説「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」。音楽史上最大のスキャンダルと呼ばれる「会話帳改竄事件」を題材に、楽聖ベートーヴェンの伝記を捏造した秘書アントン・フェリックス・シンドラーの視点から描かれる物語は、宮部みゆきも「徹夜本です」と絶賛し、2025年9月には映画化も決定しています。本記事では、この衝撃的な作品の詳細なネタバレを含む、登場人物紹介からストーリーの結末まで、余すことなく解説していきます。

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小説「ベートーヴェンの捏造」のネタバレ

田舎の秀才シンドラーはウィーン大学で憧れのベートーヴェンと出会い、無給の秘書として献身的に仕えます。しかし空気が読めない性格で次第に疎まれ、金銭トラブルの濡れ衣を着せられ一度は追放されます。数年後に戻り、最晩年のベートーヴェンを看取ります。死後、2万人が参列した葬儀を目撃したシンドラーは、ライバルのホルツらが伝記を書くと知り、会話帳400冊中140冊を盗み出してウィーンを脱出します。故郷で会話帳を改竄し、女性関係や下品な言動を削除、「運命はこのように扉を叩く」等の名言を捏造して理想の楽聖像を創作します。1840年に伝記を出版し、その後も批判者と戦い続けながら改竄を重ね、孤独のうちに1864年死去しました。彼の嘘は100年以上信じられ、1977年にようやく暴露されました。

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登場人物

アントン・フェリックス・シンドラー

本作の主人公であり、ベートーヴェンの秘書です。1795年、現在のチェコの田舎町に生まれました。丸眼鏡がトレードマークの音楽を愛する優等生として育ち、ウィーン大学法学部に進学します。そこで運命的にベートーヴェンと出会います。献身的に尽くしますが、空気が読めない性格と極端な反応で次第に疎まれるようになります。ベートーヴェンの死後、会話帳を独占し、大幅な改竄を加えて伝記を執筆しました。「無給の秘書」として自己を美化し、理想のベートーヴェン像を創り上げた張本人です。プロデューサーとしては有能でしたが、その嘘は200年近く音楽史を歪めることとなりました。

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

1770年生まれの大作曲家です。20代前半からウィーンで活動し、ピアニストから作曲家として大成しました。若い男性を使い走りにする悪癖があり、秘書たちの間に嫉妬と憎悪を生み出します。20代後半から聴覚に異常をきたし、40代後半から会話帳を使用しました。実際は気分の浮き沈みが激しく、横柄で不潔、女性関係も奔放な人物でしたが、シンドラーによって高潔な楽聖として美化されました。シンドラーを便利使いしながらも基本的には煙たがっており、金銭トラブルを口実に追い出そうとするなど、人間的には問題の多い天才でした。

カール・ホルツ

1799年生まれのウィーン出身です。ベートーヴェンのもう一人の秘書で、役人として働きながらアマチュアのヴァイオリニスト兼指揮者として活動しました。金髪碧眼のイケメンで陽キャラ、最強のコミュニケーション能力を持ち、ベートーヴェンの心を掴みます。会計課勤務で計算も得意、裕福な恋人もいるという完璧な人物です。シンドラーにとっては最大のライバルであり、ベートーヴェンの死後は伝記プロジェクトを立ち上げようとしますが、シンドラーに会話帳を持ち去られます。後にシンドラーに対して激しいネガティブキャンペーンを展開しました。

フェルディナント・リース

1784年、ベートーヴェンと同郷のボン生まれです。10代でウィーンに出てベートーヴェンの愛弟子となり、ピアニスト、作曲家、指揮者として成功しました。ベートーヴェンから愛されたという自信に満ち、若い頃のベートーヴェンのエピソードを面白おかしく語ります。後にヴェーゲラーと共著で「ベートーヴェンに関する覚書」を出版し、人間味あふれるベートーヴェン像を描いたことで、理想化を進めるシンドラーの怒りを買います。シンドラーから見れば、ベートーヴェンの威光を利用して自己顕示する憎むべき存在でした。

カール・チェルニー

1791年ウィーン生まれです。9歳でベートーヴェンの弟子となり、後にヨーロッパ随一のピアノ教師として名声を得ました。フランツ・リストを育成したことでも知られています。ピアノの腕前は抜群で、シンドラーにとっては憧れの存在でしたが、リストを育てたことで敵認定されます。現在では練習曲の作曲家として知られていますが、実際は多くの素晴らしい作品を残しています。シンドラーの理想とするベートーヴェン像とは異なる、より人間的な師の姿を知る証人の一人でもありました。

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ストーリー

序章:運命の出会い

物語は1977年の国際ベートーヴェン学会から始まります。二人の女性研究者が会話帳の改竄を発表し、音楽史上最大のスキャンダルが明らかになります。そこから時代は19世紀初頭へ。田舎の秀才シンドラーは、ウィーン大学法学部に入学しますが、ナポレオン戦争後のウィーン会議の混乱に巻き込まれます。そんな中、幼い頃から憧れていたベートーヴェンと運命的に出会い、魔法にかかったように彼の虜となります。

献身と疎外

シンドラーは無償でベートーヴェンの秘書となり、日常の雑務からビジネスまで献身的に尽くします。第九交響曲の初演では、プロデューサーとして見事に成功させます。しかし、空気が読めず、皮肉も理解できない性格が災いし、次第にベートーヴェンから疎まれるようになります。一方で、陽気で有能なホルツが現れ、ベートーヴェンの寵愛を一身に受けます。シンドラーは嫉妬に苦しみながらも、献身を続けます。

決別と帰還

ベートーヴェンは収益着服という濡れ衣を着せてシンドラーを追い出そうとします。非難の手紙を送りながらも、末尾には次の仕事の依頼を平然と書き添えます。この理不尽な扱いに耐えかねたシンドラーは一度離れますが、数年後に戻ります。その間の出来事を会話帳で知ったシンドラーは、この記録の重要性を悟ります。最晩年のベートーヴェンを看病し、1827年3月26日の死を看取ります。

2万人の葬儀と決意

ベートーヴェンの葬儀には2万人が参列しました。この光景を目の当たりにしたシンドラーは、楽聖の偉大さを改めて実感します。一方でホルツを中心に伝記プロジェクトが立ち上がろうとしていました。シンドラーは密かに会話帳約400冊のうち約140冊を持ち出し、ウィーンを去ります。「これはベートーヴェンを守るため」と自分に言い聞かせながら、悪の道を歩み始めます。

理想のベートーヴェン創造

故郷に戻ったシンドラーは、会話帳を基に伝記執筆を開始します。しかし、そこに記された生身のベートーヴェンは、理想とはかけ離れていました。女性関係、金銭問題、下品な言動。シンドラーは「真実など要らぬ、理想こそが真実だ」と決意し、会話帳の改竄を始めます。都合の悪い部分は燃やし、残った部分には自分の理想とする会話を書き加えていきます。1840年、初版の伝記が出版されます。

終わりなき戦い

ヴェーゲラーとリースが人間味あふれるベートーヴェン伝を出版すると、シンドラーの怒りは頂点に達します。新聞で反論し、伝記を改訂し、会話帳の改竄をさらに進めます。リストのような後継者気取りの音楽家たちとも戦い続けます。友人も家族もいない孤独な戦いの中で、話し相手は自分が創り上げた理想のベートーヴェンだけです。次第に自分が作った虚構に自分自身が囚われていきます。

最後の対決と死

晩年、伝記作家セイヤーとの対峙がシンドラー最後の戦いとなります。1864年、シンドラーは死去しました。遺品整理で明らかになったのは、彼が本当に改竄したかったものー自分とベートーヴェンの関係性、そして自分自身の存在証明でした。シンドラーの嘘は、その後100年以上も真実として信じられ続け、1977年にようやく暴かれることになります。

映画「ベートーヴェン捏造」情報

公式サイト

2025年9月12日、待望の映画「ベートーヴェン捏造」が全国公開されます。脚本はバカリズムが担当し、原作を丁寧に紐解きながら斬新なアイデアを加えて映画化しました。監督は「地獄の花園」でもバカリズムとタッグを組んだ関和亮が務めます。

主演のシンドラー役には山田裕貴、ベートーヴェン役には古田新太という実力派俳優を起用。山田裕貴は、ベートーヴェンへの愛が重すぎる忠実な秘書を熱演します。古田新太は、下品で小汚いおじさんから聖なる天才音楽家へと捏造されていくベートーヴェンを演じます。

その他のキャストも豪華で、染谷将太がシンドラーの嘘を追及するアメリカ人ジャーナリストのセイヤー役、神尾楓珠がライバル秘書のカール・ホルツ役、前田旺志郎がベートーヴェンの甥カール役を演じます。さらに、小澤征悦、生瀬勝久、小手伸也、野間口徹、遠藤憲一といった実力派俳優陣が脇を固めます。

特に注目すべきは、人気バンド「Mrs. GREEN APPLE」のキーボード担当・藤澤涼架が、天才ピアニスト・作曲家のショパン役で劇映画初出演を果たしたことです。音楽家が音楽家を演じるという話題性も相まって、公開前から大きな注目を集めています。配給は松竹が担当し、19世紀ウィーンで起きた音楽史上最大のスキャンダルを、まさかの日本で実写映画化という挑戦的な作品となっています。

まとめ

「ベートーヴェン捏造」は、音楽史上最大の詐欺師とされるシンドラーの内面に迫ることで、単純な善悪では割り切れない人間の業を描いた作品です。天才に魅入られた凡人の悲劇、承認欲求と劣等感、そして愛と憎しみが入り混じった複雑な感情が、200年にわたる巨大な嘘を生み出しました。私たちが知る楽聖ベートーヴェン像の多くがシンドラーの創作であることは衝撃的ですが、同時に、なぜ人々がその美しい物語を求め、信じ続けたのかという問いも投げかけます。真実と虚構、理想と現実の狭間で苦悩した一人の男の物語は、現代のフェイクニュース時代にも通じる普遍的なテーマを含んでいます。2025年の映画化でどのように描かれるか、大いに期待が高まる作品です。

この記事を書いた天使
ネタバレ天使長

映画・漫画・小説作品の核心を読み解き、鮮明かつ整理された構成で解説する権威ある執筆者。膨大な伏線や結末を誰にでもわかりやすく伝える手腕は、「ネタバレを通じて作品の深層を味わえる」と読者に信頼されています。知的好奇心を刺激し、驚きと洞察を与えるネタバレのまとめ方は、多くのファンの道標となっています。

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