朝倉かすみの小説平場の月は、50代の男女が35年ぶりに再会し、人生の後半に訪れた切ない恋を描いた作品です。第32回山本周五郎賞を受賞し、第161回直木賞候補にもなったこの物語は、2025年11月に堺雅人と井川遥主演で映画化されることが決定しています。本記事では、平場の月のネタバレを含めたあらすじから結末まで、詳しくご紹介します。
【30秒で分かる!】平場の月のネタバレ!
50歳の青砥健将は病院の売店で中学時代の同級生、須藤葉子と35年ぶりに再会します。離婚を経験した二人は互いに惹かれ合い、関係を深めていきますが、須藤には大腸がんが見つかります。青砥は結婚を申し込みますが、須藤は一年間会わないことを条件に断ります。その理由は自分の命が長くないことを知っていたからでした。一年後、青砥は同級生から須藤がすでに亡くなっていたことを知らされます。
平場の月の概要
平場の月は2018年に光文社から刊行された朝倉かすみの長編小説です。埼玉県朝霞市、新座市、志木市を舞台に、平凡な日常を送る50代の男女の恋愛を描いています。タイトルの平場とは、ごく一般の人々のいる場所という意味で、作者は特別ではない人々の人生を月明かりのように静かに照らし出す物語を目指しました。
原作者・朝倉かすみについて
朝倉かすみは北海道出身の作家で、2003年に田村はまだかでデビューしました。その後、北海道新聞文学賞、小説現代新人賞、吉川英治文学新人賞などを受賞し、平場の月で山本周五郎賞を受賞しました。日常の中にある人間の心の機微を繊細に描く作風が特徴で、リアルな人物描写と丁寧な心理描写に定評があります。朝霞市に住んでいた経験もあり、作中には実在の地名や店舗が多数登場しています。
映画版の監督・土井裕泰について
2025年11月14日に公開予定の映画版では、花束みたいな恋をしたやハナミズキなど、数々の恋愛映画を手がけてきた土井裕泰が監督を務めます。土井監督は繊細な心の動きを映像で表現することに定評があり、映画ビリギャルや罪の声など、幅広いジャンルで高い評価を得ています。平場の月では、原作では断片的だった中学時代の初恋シーンをさらに掘り下げて描いています。
映画版の脚本家・向井康介について
脚本を担当するのは、ある男で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した向井康介です。向井は複雑な人間関係や心理描写を緻密に構築する脚本で知られ、平場の月でも50代の男女の揺れ動く感情を丁寧に描き出しています。主題歌は星野源が書き下ろした楽曲いきどまりが使用され、映画全体に温かみと切なさを添えています。
平場の月のキャスト
青砥健将(堺雅人)
主人公の青砥健将は50歳の男性で、離婚後に地元の埼玉に戻り印刷会社で働いています。中学時代に須藤に告白してフラれた過去があり、35年ぶりの再会で再び彼女に惹かれていきます。映画では堺雅人が演じます。堺は半沢直樹シリーズや真田丸、VIVANTなど数々のヒット作で主演を務め、本作は8年ぶりの映画主演作となります。強烈なキャラクターを演じることが多い堺が、等身大の中年男性を演じる点が注目されています。
須藤葉子(井川遥)
ヒロインの須藤葉子は青砥の中学時代の同級生で、病院の売店で働く50歳の女性です。芯が強く自己完結型の性格で、親友の夫と結婚後に死別し、その後若い男性に貢いで資産を失うなど波乱の人生を送ってきました。映画では井川遥が演じます。井川は数々のドラマや映画で活躍し、美しさと演技力を兼ね備えた女優として知られています。本作では、芯の強さと儚さを併せ持つ複雑な女性を演じています。
その他の登場人物
映画には大森南朋、成田凌、吉瀬美智子、中村ゆり、安藤玉恵、椿鬼奴、柳俊太郎、倉悠貴などが出演しています。大森南朋は青砥の職場関係者を演じ、成田凌は須藤の元恋人役で物語に深みを与えています。原作にも登場する同級生のウミちゃんや安西なども映画に登場し、地元の人間関係のリアルさを演出しています。
平場の月のあらすじと結末
35年ぶりの再会と互助会の始まり
物語の冒頭、青砥は同級生の安西から須藤が亡くなったことを知らされます。そこから時間は遡り、青砥が病院で検査を受けた際に売店で須藤と再会したところから物語は展開します。中学時代に青砥が須藤に告白してフラれた思い出を持つ二人は、50歳になった今、お互いに離婚を経験し孤独を抱えていました。須藤は景気づけ合いっこしないと青砥を誘い、二人は互助会と称して定期的に会うようになります。須藤は証券会社を退職後、夫に先立たれ地元に戻ったこと、その後若い男性にお金を使い込んでしまった過去を語ります。
須藤の大腸がん発覚と闘病生活
青砥の検査結果は異常なしでしたが、須藤には大腸がんが見つかります。須藤は手術を受け、人工肛門であるストーマを造設することになりました。青砥は須藤を支えようとしますが、須藤は人に頼ることを罪のように感じる性格で、なかなか素直に甘えることができません。抗がん剤治療の副作用で体は辛く、仕事もできず生活費や治療費の不安に押しつぶされそうになりながらも、須藤は一人で耐えようとします。青砥は須藤の闘病を見守りながら、彼女への想いを深めていきます。二人は体を重ね、青砥は須藤にネックレスを贈るなど、恋人のような関係になっていきました。
青砥のプロポーズと須藤の決断
抗がん剤治療を終えた須藤はアパートに戻り、青砥は彼女との生活が続くと思っていました。しかし須藤は検査で転移が見つかり、先が長くないことを悟ります。そんな中、青砥は一緒にならないかと結婚を申し込みますが、須藤はそれ言っちゃあかんやつと関西弁で断り、一年間会わないことを条件に提示します。青砥は一年後に温泉旅行に行こうと約束しますが、須藤は青砥に迷惑をかけたくない、合わせる顔がないという思いから、最後まで病気のことを隠し通そうとしたのです。須藤の誰にどんな助けを求めるのか、わたしが決めたいという言葉が、彼女の生き方を象徴しています。
一年後の真実と須藤の最期
約束の一年後、青砥は池袋のホテルで須藤を待ちますが、彼女は現れません。LINEを送っても既読がつかず、青砥は不安を募らせます。そして同級生の安西から、須藤が一ヶ月前に亡くなっていたことを知らされます。葬儀は行われず、青砥に連絡もありませんでした。青砥は須藤のアパートを訪れ、妹と再会します。妹から、須藤は二度目の手術や腹膜播種を経て、最期には青砥に合わせる顔がないと言って逝ったことを聞かされます。青砥は須藤が育てていた菜園の跡を掘り返し、土の中から封筒とネックレス、そして自宅の合鍵を見つけます。それは須藤が最後まで青砥を思っていた証でした。青砥は結婚なんてしなくてもよかった、ただ一緒に生きられればよかったと痛切に後悔するのでした。
まとめ
平場の月は、特別ではない日常を生きる50代の男女の切ない恋を描いた作品です。須藤が最期まで青砥に病気を隠し通したことには賛否がありますが、人に頼ることを罪のように感じる彼女の生き方が痛いほど伝わってきます。結末を知った上で読み返すと、須藤の言動一つ一つに込められた想いが胸に迫ります。2025年11月公開の映画では、堺雅人と井川遥がこの切ない物語をどう演じるのか、大きな注目が集まっています。


